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新春座談会 ~三建を挙げて、女性にも夢ある建設業づくり~

三建を挙げて、女性にも夢ある建設業づくり

建設産業界の高齢化・若手入職者の減少などに伴い人手不足が深刻化する中で、これまで以上に女性の入職を促進する環境の醸成が必要となっている。今年の新春座談会では県東部で技術職として実務に携わる4人の女性と、県沼津土木事務所・熱海土木事務所の両所長をゲストに招き、それぞれの立場から女性にとって夢の持てる建設業をつくるための意見を話し合ってもらった。

<出席者>
静岡県沼津土木事務所 所長 曽根 裕介氏
静岡県熱海土木事務所 所長 佐藤 芳健氏
静岡県東部地域局 地域課主査 野田 友子氏
株式会社伊豆急ハウジング
建設課係長 山田 順子氏
土屋建設株式会社 工務部 小倉 美鈴氏
加和太建設株式会社 土木部工事課 太田 実里氏
三島建設業協会広報委員座談会司会 出口 直樹氏
三島建設業協会 会長 小野徹氏

<司会>
三島建設業協会 広報委員会委員長 山本 裕二氏

山本 あけましておめでとうございます。本日はお忙しいところ新春座談会にお集まりいただき誠にありがとうございます。今回は「三建を挙げて、女性にも夢ある建設業づくり」と題して、皆さまに様々な観点からご意見を交わしていただきたいと思います。まずは小野会長より開会のご挨拶をよろしくお願いいたします。
小野 かつての建設業は男らしい仕事の代表という印象がありましたが、ものづくりという面から見ると女性の繊細さ・器用さを十全に発揮できる職業です。ICT技術の発展で仕事での性差が縮まっている中、女性の入職・求職が増えれば若手入職者も自ずと増えると期待しています。本日は、『女性にも夢のある建設業づくり』について、多様な観点からご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
出口 それでは、これより座談会に移らせていただきます。まずは、女性技術者の皆さまの就業の動機をお聞かせください。

太田 大学で河川環境について学んでいた頃、砂防ダムなどの土木構造物が河川の環境に悪影響を及ぼすことを知って衝撃を受けました。そこで土木の仕事に就くことで、発注者側に環境に配慮した工事を提案することができるのではないかと考えたことと、将来的に自然環境と人間の営みに土木がどのような影響を与えるか仕事を通して知りたいと思ったことがきっかけです。
小倉 高校時代の恩師から紹介を受けたことが入社のきっかけです。入社してしばらくは現場仕事に就いていましたが、4年前に結婚・出産を機に育児休暇を取り、今年の4月に同社の『建設ディレクター』として復帰致しました。
山田 私は大学で土木(環境関係)を専攻し、そちらの道に進みたいと考えていたのですが、土木と造園両方の仕事ができ、資格取得の環境も手厚い伊豆急ハウジングに入社しました。仕事では土木・造園と併せて、建築工事も含めた総合的な提案ができることに魅力を感じています。
野田 生まれ育った静岡県に残りたいという気持ちと共に、花粉症に苦しんだ経験から林業を学んだので、就職も農林事務所を志しました。現在は東部地域局に務めていますが、県では無花粉スギへの植え替えなどを進めており、これまでに学んだこと・経験したことが繋がる良い仕事に携われてきたと思っています。
出口 現在皆さんが担当されている仕事の具体的な内容と、女性からの立場で気づかれた点などをお聞かせください。
太田 施工管理担当者として、安全面・品質面など一通りの現場管理を、会社の先輩方と協力して行っています。学生対象のインターンシップを担当することも多いのですが、そこではよく3Kの実態や長時間労働の有無などについて聞かれることが多いです。確かに現場では力仕事や危険なこともありますが、私は仕事を通して知りたいことがあるため納得していますし、他のどんな業種でも自分自身がどうなりたいか明確なビジョンがあれば、多少大変なことがあってもやっていけると思います。
小野 インターンシップは具体的にどの年齢・専攻の学生を対象にしていますか。
太田 基本的には大学生で、専攻や学部については一切問いません。月に1度体験会・見学会を開いているのですが、そこでも多様な専攻の学生が集まってきます。

小倉 『建設ディレクター』として、主に舗装工事関連の書類を担当しています。土木の方では施工体制など、携われる部分から徐々に取り組んでいます。同部署には自身を含めて3人の女性が在籍していますが、現場に出ている時は周りのほとんどが男性だったので、女性だけの職場というのも世界が違って新鮮です。
山田 私は仕事で民間・公共の両方に携わっています。前者では提案から図面作成、お客さまへの提案や打合せを経て、内容が決まれば工事に入るという流れで、後者では現場管理として書類作成から現場の安全管理まで全て担当しています。小学生や近隣住民、観光客などに声をかけてもらったり、工事に興味を持ってもらえる機会が増えることが女性が現場にいるメリットだと思います。
野田 以前は東部農林事務所の治山課にいたのですが、令和元年の台風災害の際に復旧工事を対応してくれる事業者がなかなか見つからず、紆余曲折したことを覚えています。昨年の夏休みに子ども仕事体験講座を開いたところ建設業のブースが人気で、参加した子どものお母さん方や中学生の娘さんからも「女の子が元気で好印象、就職先としてもあり得る」といった良い反応をもらえました。就職に際して親の意見は大きな指針になるので、女性が楽しそうに働いているところを親に見てもらい、選択肢に入れてもらうことも肝心だと考えています。
太田 小倉さんは現場から結婚・出産を経てバックオフィスのお仕事に回られたとのことですが、どのような経緯があったのでしょうか。
小倉 私自身は現場で仕事を続けたかったのですが、子ども二人を抱えているとなかなか難しく、現在は16時までの時短勤務で働いています。育児が落ち着けばいずれは現場に戻ることも考えています。

太田 加和太建設でも以前現場にいた方が内勤に移動する事例もあり、結婚・出産を経ても現場に戻れる仕組みについて模索しています。今後何か良い取り組みなどがありましたら、ぜひ情報交換させていただきたいです。
出口 小倉さんは前回の座談会で結婚・出産で今の仕事を続けられないのではないかと危惧されていましたが、4年を経て見事にその課題をクリアされたと感じます。両土木事務所では女性の就業環境についてどのような施策を行っていますか。
佐藤 事業所ですのでトイレや更衣室などは充実しており、女性が使いやすいように整備しています。キャリアの問題では、女性の有業率が20~30代を中心に急激に下がる事例を聞きます。そこには、育休・産休を経て仕事に復帰できるか不安を抱えている女性が多いという背景が存在しています。当事務所でも、自身のキャリア形成や将来について落ち着いて考える時間を作るために、休みがしっかり欲しいという意見を数多く聞きます。
曽根 当事務所は元々女性職員が少ないのですが、10年前に私がいた時から女性用更衣室の様子が変わっていないことにショックを受けました。総務とも改善について話はしているのですが、なかなか前に進まないのが現状で、悩みの種の一つです。一方、県の職員では子どもができると夫婦そろって育休を取るパターンが増えており、私の若い頃と比べると家庭の形もずいぶん様変わりしてきているのだと感じます。家庭を持つ・持たれる女性の方々には現行の支援制度などを上手く活用しながら、キャリア形成に励んでいただきたいですね。
出口 家庭と仕事の両立についてはいかがでしょうか。
小倉 会社の理解と協力を得て時短勤務にさせてもらっていますが、終業後に子どもを迎えに行き、夕食を作るとなると時間が足りず、両立はなかなか難しいというのが現実です。
出口 山田さんも前回の座談会でご主人との家事の分担についてお話されていました。
山田 娘も大学生になって実質主人と二人の生活になったので、それぞれがやりたいことをやれる環境にはなりました。お互いの生活を支え合おうと話してはいますが、私の方が休日出勤など多く、主人に家事を任せてしまうことも多いですね。

太田 施工管理の仕事は一人前になるのに時間がかかると言われていて、結婚・出産を経ながらキャリアアップをするイメージがつかみ辛くあります。現場員は休みを取れないという風潮がありますが、一つ上の先輩が育休を取ることが決まったことがすごく励みになっています。
野田 一番上の子どもが中学生になって少しは楽になるかと思っていましたが、やはり子育ては永遠なんだと痛感しています。公務員は制度的には充実していますが、女性職員は自分の仕事に責任感のある方が多いので、仕事と家庭の両立には結婚前から男性側との意見交換が必要だと思います。
出口 最後にお仕事におけるこれからの展望などをお聞かせください。
太田 今年土木部に初めて女性の後輩社員が入ることが決まりました。それに応じて会社の環境も色々変化していくと思いますが、本日のように様々な働き方をされている女性と集まってお話できることはとても良い刺激になります。私自身も仕事を通してさらに成長した姿をお見せしたいので、またこのような会を開いていただきたいと思います。
小倉 『建設ディレクター』の仕事もまだ試行錯誤の途中で、会社内でその意義が定まっていないのが現状です。年代が上の方々にも「この人たちのおかげで現場仕事が楽になっている・任せたい」と思っていただけるように精進していきたいと思います。
山田 現場監督の仕事の中で「作業員の安全を守ること」を第一に考えています。安全性を保ちながらデザイン性も良い成果物を作ることと共に、一般の方々にどのような工事をしているかが分かるように「現場の見える化」も進めていきたいです。
野田 静岡県に初めて土木の女性技術職が入ったのは平成元年で、結婚して二人のお子さんを育てながら本庁でキャリアを積むその方は私たちの「目標」になっています。同様に、これから入庁・入職する若い女性技術職員たちがキャリアアップに対する「夢」を持てるような環境の実現に期待しています。
佐藤 日頃から発注者と受注者がコミュニケーションを取ることでお互いのできること・限界を知ることができ、有事の際にも適切な対応ができると考えています。同様に女性の皆さまにも本日のような話し合いの場を構築していただき、より良い女性の就業環境の実現に向けて活発な意見交換をお願いしたいと思います。
曽根 工事現場のメタバース化が進み、家にいながらバーチャルアバターで打合せに参加できるなど、建設業の未来が目の前まで来ています。育児中のリモートでの会議参加などに活かせる技術なので、興味のある方はぜひお声がけください。
山本 長時間に渡り貴重なお話をありがとうございました。それでは最後に小野会長からご挨拶をよろしくお願いいたします。
小野 地域を代表して実務に携わる女性の方々をお招きして、実りのある座談会を開くことができました。また両所長にも的確なご意見をいただき感謝致します。お話を拝聴する中で、今後は時短・パート勤務など、多様な働き方を選択できる環境づくりが重要になると感じました。また女性入職者が増えると共に、その他の若手入職者も増えると考えております。本日は誠にありがとうございました。


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