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新春座談会

世界ブランドとしての伊豆半島ジオパークへ!

 伊豆半島ジオパークが世界ジオパーク加盟認定に向けて再び動き出した。2014年12月に世界ジオパーク認定に挑戦したが、国際的な地質的価値の証明が不足していたとされ、認定が保留となっている。伊豆半島ジオパーク推進協議会は指摘事項も盛り込み2016年11月に日本ジオパーク委員会(JGC)、国際教育科学文化機関(ユネスコ)に申請書を再提出。2017年に行われる書類審査や現地調査などを経て、2018年4月頃に認定の可否が発表される。
 伊豆半島は現在、観光客が減少し、脆弱な交通網や災害の脅威などで、域外からの新たな投資は活発に行われておらず、その結果、雇用の機会が減少し、若者の流出と高齢化が進行している。そうした中で東駿河湾環状道路や新東名高速道路の開通などの基盤整備が進み、地域活性化を図る伊豆半島にとってジオパークは重要な観光資源の切り札と言える。「世界のジオパーク」として価値を高めていくために、今後の方向性を探るべく伊豆半島の各方面からゲストを招き、新春座談会を開催した。

出席者
・静岡県沼津土木事務所 所長 森田 尚孝氏
・静岡県熱海土木事務所 所長 植松 靜夫氏
・伊豆半島ジオパーク推進協議会 保全担当 山田 美奈子氏
・伊東市観光課 課長補佐兼企画宣伝係長 石井 千春氏
・土肥女性代表 鍵山 泉江氏
・東豆土木株式会社 代表取締役 出口 直樹氏
・一般社団法人三島建設業協会 会長 小野 徹氏

司会
・一般社団法人三島建設業協会 広報委員長 山本 裕二氏

司会 あけましておめでとうございます。2017年度の新春座談会は「世界ブランドとしての伊豆半島ジオパークへ」をテーマに、皆さまにお話しを伺いたいと思います。開会に先立ち小野会長からごあいさつをお願いします。
小野 伊豆半島の世界ジオパーク認定が保留となってしまったことは非常に残念でした。しかし、逆を言えば世界認定を受けるのに対して準備時間をいただいたということです。2020年に東京オリンピックの開催が決定され、残り4年間という短い時間で準備を進めていかなければならなくなりました。その為のアクセス道路などの建設には、計画を立て、測量や設計を行い、やっと工事にかかっても4年間という月日はあっという間に過ぎてしまいます。そう考えると伊豆半島が準備万端の「おもてなしの心」で準備を進めていくことは大変難しくなってしまいました。世界ジオパーク認定にはまだ準備期間に余裕があるので、腰を据えて地域や道路の問題などを考えることができます。10年、20年先を見据えた長いスパンでわれわれの郷土である伊豆半島をどうしていくかを考える良い契機であると考えているので、今回は皆さまから様々な意見を伺いたいと思います。
司会 まずは皆さんから自己紹介とごあいさつをお願いします。
森田 昨年4月に沼津土木事務所所長に着任しました。沼津土木は10市町を管内としており、伊豆半島地域では現在、ベロドロームへのアクセス道路として熱海大仁線で整備を進めています。また伊豆縦貫道自動車道の天城北道路が2018年度内に開通するため、そのアクセス道路として下船原バイパス等を整備しています。また防災対策として急傾斜地の崩壊対策や南海トラフ地震で津波被害が想定される土肥地区で、地域住民の方との意見交換会を開催しています。今後も市町と連携をとりながら各種インフラ整備を進めていきたいと考えております。
植松 昨年4月に熱海土木事務所所長に就任しました。熱海は道路ネットワークが脆弱で、唯一熱海を南北に移動できる国道135号を守るために橋梁・トンネルの長寿命化など、住民の安全安心を守る事業に取り組んでいます。そのほかには人工のサンビーチや南イタリアのナポリ港をイメージした渚デッキの整備など観光地としての景観を配慮した公共施設整備に取り組んでいます。
山田 昨年4月に下田市から出向し伊豆半島ジオパーク推進協議会の事務員を務めています。今日は皆さまの貴重な意見をお聞きしたいです。
石井 伊豆半島ジオパーク推進協議会の事務局員としてジオパークの立ち上げ、世界認定申請などに携わりました。「伊豆半島をひとつに」というテーマを掲げて世界認定までまっしぐらに取り組んできました。昨年の認定保留という結果を受けて、事務局としての地盤が不十分だったように感じています。現在は伊東市職員として、地域を活性化しつつ、皆さまの声を聴きながらジオパークに対する提言をしていければと思っています。
鍵山 ジオパークの世界認定では観光客が増加することが予想されるので、防災対策はより重要なものになってきます。土肥は伊豆半島の中でも特に防災に対する意識が強いので、今日はそういった立場からも意見を提言していきたいです。
出口 熱海の地で仕事をしながら青年世代の方々と異業種交流をしているので、そのような立場からも意見を提言できたらと思っています。
司会 地域の現状についてそれぞれの立場から意見を聞かせてください。
森田 伊豆縦貫自動車道は未整備区間となっている天城湯ヶ島~河津間(いわゆる天城越え区間)で現在、計画段階評価を進めており、ここが整備されればすべての道路がつながり、道路ネットワークが構築されます。最近では、2020年東京オリンピック自転車競技が伊豆市で開催されることを受けて、自転車空間の整備を要望する声が上がっています。しかし、伊豆半島は地形が急峻で、道路の拡幅が簡単にはいきません。整備方法やすべての道路利用者に配慮した空間を考えていくことが今後の課題です。
植松 伊豆半島は、豊かな自然環境や温泉など様々な魅力があり、ジオパークは伊豆半島の新しい魅力の一つとして加わるという認識を持っています。特に熱海市、伊東市において観光は主要産業であるため、観光客に来てもらえるように利便性、景観を考慮したインフラ整備を進めてきました。ジオサイトは公共交通機関を利用して徒歩で訪れる人も少なくないので、公共交通と歩行者ネットワークを構築していくことが課題となっています。ジオパークはもちろんですが、伊豆半島全体を魅力的にしていくために取り組まなくてはならないことがたくさんあると考えています。
山田 伊豆縦貫自動車道や道の駅の整備などで、昔と比べると景色が変ってきました。下田市は海を目的に観光に訪れる人が多いですが、アクセスが良くなりジオパークを訪れる人も増えていると思います。
石井 伊東市は若い人が市外に流出するなど、消滅可能性都市に挙げられています。自分の地元を大事に思ってもらえれば若い人にも市に残ってもらえると考えており、市の魅力を地元高校生が学び、それを発信してもらう「伊東市高校生歓光おもてなし特派員」というプロジェクトに取り組んでいます。
鍵山 土肥地区は高齢化・人口の減少が進み、土地や畑が荒れ放題になっています。コスモスなどの花を植える活動など景観対策の活動を有志で行っており、病気などで仲間が減りつつありますが、活動をひたむきに続けている状況です。
出口 熱海市は昨年11月に熱海駅ビル「ラスカ熱海」が完成するなど例年以上に人が集まってきていると思います。
司会 伊豆半島ジオパークを世界認定する上で課題・問題点はありますか。
山田 景観と安全の両立が課題です。観光客にはジオの自然そのままを見てほしいですが、事故が起こった場合は誰も責任を取れませんし、一方で整備すれば景観が損なわれる可能性があります。今後、行政と十分に連携をとっていくことが必要です。
森田 ジオパークは伊豆半島みんなのものという認識を持ってもらう必要がありますね。
石井 ジオパークは地域振興を目的とすることもあるため、私有地であればジオ付近でもある程度の開発は仕方がないと思います。また、ジオパークの問題点は認知度が低いことだと考えています。2014年にジオパークの認知度調査を実施し、言葉を知っている人は8割という高い結果が得られましたが、具体的な活動を知っている人は全体の2割にも達しませんでした。認知度が低いと、素晴らしい地層がある箇所も地元の人が気づかず開発をするということも起こり得ます。開発と保全は表裏一体ですが、双方折り合いをつけた形で自然を後世に残していくためにジオパークそのものを知ってもらう必要があります。
植松 ジオにいった人が周辺の市街地を楽しむことができるようなまちづくりを官民で考えていくことが伊豆半島全体の魅力アップに繋がると考えています。
司会 オリンピックの開催などで外国人観光客も増えることが予想されています。
出口 伊豆半島は意外と欧米人が好むような地形、ライフスタイルの要素があり、自然を活用したツーリズムが興味深いですね。熱海の飲食店ではメニューの多言語化などに取り組んでいる動きがありますが、道路整備においても、世界の伊豆半島ジオパークを目指すのであれば、標識や道路標示など世界標準のデザインにしていくことが望まれています。
司会 ジオガイドはどういった方が務めていますか。
石井 過去にツアーガイドを務めていた方など、最初は市町で推薦された人を採用していました。最近では自ら手を挙げてくれている人もいます。できれば若い人にやってもらいたいと思っていて、自分の仕事の一つにジオパークというエッセンスを取り入れていただきたいです。
小野 最近ではジオパークを取り入れた「ジオ菓子」というのもありますが、もっとジオを取り入れた地元の名産が出てきてくれればいいですね。
司会 最後にひと言ずつお願いします。
森田 伊豆半島はお金が落ちる仕組みを作っていく必要があります。例えば修善寺と下田それぞれにジオパークのコースをつくり、観光の際には必ず有料のジオガイドを付けるなどして伊豆半島の雇用も促進していただきたい。また、「ここへいきたい」と思わせるように宣伝に力を入れることも必要です。
植松 建設業が携われる伊豆半島の魅力づくりは古き良きものを残していくこと、新しく何かを造ること、既存施設を改善していくことだと考えています。伊豆にはなまこ壁や旧天城トンネルなど古くて良い文化があり、これらを観光客に楽しんでもらえるよう保全していきます。三島市にあるスカイウォークのような新しい名所をつくっていくことも一つの手段です。既存施設の改善では例えば修善寺の温泉を情緒あるものにするなど、建設業と一緒になって長い時間をかけて伊豆半島をよりよくしていきたいと考えています。
山田 推進協議会ではジオガイドの育成、ジオサイトの魅力あるコースづくりに尽力しています。協議会の会員である三島建設業協会には今後とも協力をお願いします。
石井 きょうの話を聞くと伊豆半島を回遊させることは大変難しいと感じました。伊豆半島ジオパークは15の市町があり、うまく周遊させて一つ一つの町を楽しんでもらいたいけれども、全体を見ると一つ一つの情報が散らばっていて、それぞれの市町でも情報を吸い上げられていない状況です。市町が連携しジオパークで何かできないのかと考えています。地域の皆様にはまず声を上げていただき、行政がそれをつないでいくことで周遊をしてもらえるようになるかもしれませんし、異業種の方々が結びつくことで大きな輪ができていくと思います。官民それぞれが連携して盛り上がり、それが伊豆半島全体に広がっていくことが理想です。
鍵山 これを機会にジオパークを勉強し、景観対策の活動などで自治体に協力を求める所は求めていきたいと思います。きょうはありがとうございました。
出口 ジオサイトは自然の景観としては危険な箇所が多いと思います。例えば伊豆の海岸線も切り立った崖の直下を通っている場所が多いです。一方ダイナミックなところもジオの魅力です。現在、下に国道を抱えた崩れやすい斜面の工事を進めていますが、国交省の許可をいただいてドローンを飛ばしたところ、景色を俯瞰して見るのにドローンは適しているという感想を持ちました。われわれ熱海市民としては地元に住んでいる方々に対して、「景色はとてもいいけれど、危険な箇所もたくさんある」ということをドローンを使って伝えていきたいと思っています。
司会 きょうは長時間にわたり貴重なお話をありがとうございました。最後に小野会長から謝辞をお願いします。
小野 ジオパークを世界認定するということは、世界が競争相手になるということです。そのような中でわれわれが「おもてなし」をして迎え入れるということは、ソフト面、ハード面においてやるべきことは多々あります。しかし、すべてのことがすぐにできる訳ではありません。しっかりと計画を立てて着実にやっていかなければなりません。ただ、スピード感を持たないと世界との競争に負けてしまいます。伊豆半島が一体となって世界ジオパークを利用しながら、またつくりあげていきたいと思います。本日は貴重なご意見をありがとうございました。


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